審査員推薦作品
「しゃぼん玉」
【講評】審査員:大沼 映夫 先生
なんといっても、画面が若々しく色彩が美しい、寒色と暖色との組み合わせも繊細で清潔だ。絵は心の表現であり、人の心というものはいつの時代にあっても変わるものではないが画家の生きている時代、すなわち本村・阪下 両氏の今日が充分に、この作品に表現されているかが重要だ。絵画全体に摸写された、しゃぼん玉が人物の表現を効果的に消去し爽やかな調和を引き出している。惚れ惚れとする触覚的作品を作り出した、秀作である。
審査員推薦作品「しゃぼん玉」
審査員推薦作品
「自転車じいちゃん」
【講評】審査員:中野 淳先生
おじいちゃんが孫をうしろに乗せて、自転車を走らせようとしているシーンをユ―モラスに描いています。一見、タッチや塗りも荒々しく粗暴に見えますが、おじいちゃんと孫の表情を見ていると、さまざまな情感がきめこまかく伝ってきて楽しくなります。無雑作にみえる描き方の中に、作者はひそかに表現を工夫しているように思えます。人物にくらべ自転車を小さくすることで、おじいちゃんのからだが大きく、動きが強まっています。形のデフォルメも面白く妙味があります。光による明暗と赤や緑の線描の効果も好いと思います。正方形の画面に生き生きとした感情を吐き出していて良いのですが、構成に工夫されることも必要でしょう。それにしても如何にも若者 らしい、みなぎるような情熱的な絵でうれしい限りです。
審査員推薦作品「自転車じいちゃん」
審査員推薦作品
「春色 ~ cherry blossom ~」
【講評】審査員:佐野 ぬい 先生
画面全体の華やかさ、爽やかさに先ずは引き込まれました。作者のモチーフの桜は、力強く一本の樹に堂々たる貫禄で咲きほこっています。桜の花は私にとっては過去から未来へつないで行く不思議な心地良さがあるのです。作者のこれからの前進に期待致します。
審査員推薦作品「春色 ~ cherry blossom ~」
審査員推薦作品
「ぬくもりの家」
【講評】審査員:山本 貞 先生
どこの部屋だろうか、高い位置から俯瞰するかのように目線を定めている。統一的な茶系の色調が落ち着いた感じに絵を仕上げている。もうひとつの成功点は人物のバックも、いろんな物たちと同じに扱われている点であろう。そこで得た調和は魅力的なものになっている。細かい部分を省いて、全体としての構成に主眼を置いたのは良かった。題名はあとになって知ったのだが「ぬくもり」の気分が、ここにはしっかりと描かれていて、「なるほど」と思った。作者の気持ちがこの絵から確かに伝わってくる、いい作品だと思った。
審査員推薦作品「ぬくもりの家」
審査員推薦作品
「私だけの」
【講評】審査員:山本 貞先生
ここだけは間違いのない自分の領地、自分の小さな宇宙である。本人は、きっとこの椅子に座ると気分も落ち着いて将来の夢が限りなく伝わって行くに違いない。何をモチーフにしてもいいのに、この愛すべき自分の机を描いた所に、この作品の価値がある。画家である僕たちがイーゼルに向かった時の心境と同じことなのだろう、だから共感がある。日常のさりげない場所を描いたものであるから妙な作為がなく素直に見られる。絵がのびのびしているのは仕掛けがないからだ。絵にとりたてて注文はないがホッチキスの様な金属の物をもう少しピリリと描いたり薄い紙の端がシャープであったらと思う。個人のささやかな一隅を描いて絵が結構しっかりしているし、それに高校生の日常が感じられて楽しい。このコンクールの中ではかなり正攻法で堂々と描き上げた作品であって好感がもてる。〈私だけの〉課題がこれから社会に向けてどう広がって行くか期待したい。
審査員推薦作品「私だけの」
審査員推薦作品
「潮干狩り」
【講評】審査員:中野 淳 先生
海浜の潮干狩りの光景を、写実的な描写ではなく、軽妙なタッチで画面を造っています。素直な感性と描写が、溶け合って快適な感情を見る側に与えます。三人の合作のようですが、この共同制作をどのように進めたのか、判りません。しかしホワイトを基調にした色彩効果は、地味ながら中々良いと思います。それぞれの人物の配置も妙味があり、遠く海の見える画面構成にも確かさがあります。絵具の扱いも、何気ないようですが、透明・不透明を使い分け、厚薄のメリハリをつけていて良いと思います。潮干狩りの愉しさを漂わせた画面から、ざわめいた空気を伝える良い絵だと思います。
審査員推薦作品「潮干狩り」