審査員推薦作品
「花」
【講評】審査員:佐野 ぬい 先生
上北さんの作品に出合った途端、絵の中に吸い込まれるような美しさに見とれてしまいました。画面全体の構図の確かさ、色彩の面積とその配置がとても新鮮です。表現と技術の調和がとれています。細部にわたっての直線や曲線の使い方が面白く進められています。中心にある黄色は、上北さんのセンスの良さを物語って圧巻です。しっかりした制作の時間の流れを感じて、黄色の響きの中に長い時間ひたることが出来ました。これからも自由な気持ちで、また一点一点良い作品に挑戦して下さい。
審査員推薦作品「花」
審査員推薦作品
「虚空」
【講評】審査員:山本 貞 先生
灰色の空に、グレーの工場、人はだれもいない。生きているのは手前にのぞいている分厚い植物の葉だけだ。いまは生産をしていない工場。人たちの去った工場は死のような静寂が広がる。このモノクロームの世界を作家は執拗に描き続けた。普通、灰色中心の作品は何か淀んだ、どんより空気に仕上がってしまうが、この作品は〈切れ味〉がよく、工場の魂が迫ってくる。これは、モチーフの前に立った作者の知的な感情が、いわば〈クール〉な受け止め方をしたのだと思う。構成力もある。これからが楽しみな若者であろう。
審査員推薦作品「虚空」
審査員推薦作品
「思春期Ⅳ」
【講評】審査員:田中 義昭 先生
この作品は少年期から青年期の今の気持ちを素直に正面から追求した優れた作品です。若者の悩み等を内面から表現し色彩もおさえて、時代の流れの中に思春期表現された作品です。ガッシュ又はアクリル系と思いますが、油彩の様な力強さを感じられます。
審査員推薦作品「思春期Ⅳ」
審査員推薦作品
「タイヤとり」
【講評】審査員:遠藤 彰子 先生
運動会でのタイヤ取競争を描いた作品。四角い画面に逆三角形という不安定な構図をとることによって、画面に動的な気配を感じさせ、人物たちに力強い躍動感を与えています。また、それぞれの人物たちの有機的な形がリズムを作っており、運動会当日の歓声までも聞こえてくるような臨場感と空気感を生み出していました。独自の視点と世界観を感じさせる生き生きとした良い作品です。
審査員推薦作品「タイヤとり」
審査員推薦作品
「美術室 洗い場」
【講評】審査員:中野 淳 先生
極めて日常的な、変哲のない洗い場を描いています。40号の縦の画面を生したシンプルな構図ですが、人の暮らしを物語っていて見飽きることがありません。色彩も抑制されているので、いわゆる絵らしい華やぎもありません。しかし洗い場や洗面器の質感表現に優れていて、レアリズムの実感が伝わってきます。物質を厳しく追求するだけでなく、奥行や空間の表現にも、優れています。それは絵具の厚薄や透明、不透明の効果を心得た技法を身につけているからだと思います。右上端の色彩効果は悪くありませんが少し弱いような気がします。対象を深く観察した良い絵だと思います。作者のひそやかな喜びの感情も流れていて素晴らしいと思います。
審査員推薦作品「美術室 洗い場」