審査員推薦作品
「blooming」
【講評】審査員:大津 英敏 先生
今回の出品作中で、最もオーソドックスな作風だったのではないでしょうか。
画中に、若い女性の姿と、手に持つ花、そして窓に置かれた花があり、その花の置かれた窓の向こうに丘を駆ける子ども2人のいる風景など、この絵を描いた人の、画面全体に気配りのある仕上がりが感じられます。
レオナルド・ダ・ヴィンチ以降の、バランスがよくて、画面全体に描く人の気持ちが、見る人に伝わってくるというような完成度の高い作品だと思います。
審査員推薦作品
「子供ら」
【講評】審査員:大沼 映夫 先生
佐藤陽都君(高校2年生)の作品が強いとか弱いとかで選考するのではなく、また社会に対して痛烈な皮肉と風刺がなければと言うのでもない。絵を描くことは自己の内部に深くかいくぐったことによって日常的な現実の背後にある事物の本質や我ら人間の実体を透視する目でこの作品を捉えたのでしょう。一見弱々しく見えるアンティームな仕事に光をあたえたいと思い選考しました。
審査員推薦作品
「蝗害」
【講評】審査員:高木 匡子 先生
美しい空色が目の前に飛び込んできた。両手をひろげ思いっきり深呼吸をしたくなる様な川辺の緑地。昆虫たちが絵の画面の外から我先にと絵に飛び込んでくる。どの草に着地しようかと先を急いでいる虫たちに、作者の外で思いっきり遊びたいという気持ちが見てとれる。そして、空色と木々のシルエットのコントラストが美しく、全体的に流れるやわらかな空気感を見事にまとめている。少ない色彩の中に微妙な色の変化を描きわけ、自分なりの世界観を出せたことに魅了された。
審査員推薦作品
「City」
【講評】審査員:山本 貞 先生
絵の中では、孤立したかの多くの人々が深い霧の街を歩いている。これは幽鬼の街の光景である。原初からの人間たちの行動はこれに近いものであったかもしれない。絵をスタートする時、すでにこの情景があって、それをビジュアルに伝えたいと願って完成した作品だろうと思う。
そして絵は時に文字よりも豊かに見る人に伝える、だからこの作品は見る人の空想力を広げて、時には作家の意図を超えて広がっていく。現代絵画とは絵から文学性やドラマ性を追求して久しいが、どっこい、この若い絵を描く人たちにはそうしたことにおかまいなく自分の心をどう訴求するかが素直なかたちで存在し、こうした作風が生まれてくるのだ。
大人たちは若い人たちの心の奥を、こうした作品で少しだけ覗くことができるのだ。